1月27日、スイス連邦内閣は、新型コロナウイルス感染症の流行を封じ込めるための一連の措置を閣議決定した。
記者会見の後半で、「新型コロナウイルスの流行が始まって1年になる。スイスでは多くの犠牲者を出し、多くの財源を動員している。スイス連邦政府は、コロナウイルス とともに生きる戦略に後悔はないのか?アジア太平洋諸国でうまくいっているのに対して、失敗の政策じゃないのか?」と言う質問が出た。
Guy Parmelin(ギー・パルムラン)氏は、連邦民主主義のシステム上、州政府との連携がある事、感染症の専門家・経済界の専門家をアドバイスを聞きながら措置を決定している事などを持ち出して守りに入った。
そして、「アジアと言っても全て完璧にうまくいっているワケじゃない。東京オリンピックが行われたら、(日本は)困難に見舞われるだろう。」と日本を話題にした。
Alain Berset(アラン・ベルセ)氏が後を引き継いで、「ニュージーランドや台湾は島国。スイスと比べられない。スイスはヨーロッパの中央に位置して、何世紀も近隣諸国とコンタクトがある。ゼロコロナはスイスの戦略ではない。スイスは地理的・社会的に適した戦略がある。」とスイスのやり方・スタンスを説明した。
スイス連邦政府
スイスは、日本のように「GoTo トラベル」をやらなくても、人々の移動が国内外ある地域だ。西ヨーロッパの真ん中に位置する。
2月現在、スイスでは、飲食店・アパレル関係の店は閉業だ。初等教育が開校していたり抜け穴が多い政策だが、できるだけ人と人のコンタクトを減らしている。
12月18日、スイス連邦政府は、新型コロナウイルス感染症に対する「全国的措置の強化」を発表。主に飲食店やスポーツ・文化・レジャー施設の休業だ。[sitecard subtitle=関連記事 url=https://riyoblog.co[…]
ゼロコロナを目指さないスイスは、どんな措置で新型コロナウイルス感染症の流行を封じ込めるのか?
本記事では、次の順序で、1月27日、スイス連邦内閣発表の「新型コロナウイルス感染症の流行を封じ込めるための一連の措置」について、ポイントをご紹介・解説する。
記者と閣僚の質疑応答で気になった事も、記者会見の動画とともに付け加えた。
・1. 新型コロナウイルス検査戦略の拡張
・2. 濃厚接触者に対する検疫(自己隔離)ルールの変更
・3. スイス入国時における PCR 検査結果陰性の証明
・4.【感染者追跡のための連絡先情報の収集について】車で入国する人にはちゃんと検問できるのか?
・5. 刑事罰および行政罰の適用
・6. スイス連邦政府による薬局での予防接種費用負担
・スイス連邦政府の発表のリンク
・在スイス日本国大使館と在ジュネーブ領事事務所の連絡先
この記事は、在スイス日本大使館から届く情報、スイス連邦政府のサイト、RTS(スイス・ロマンド放送)のサイトを元に作成。
1. 新型コロナウイルス検査戦略の拡張
使用の画像 : RiyoBlog
スイス連邦政府が、無症状者に対する新型コロナウイルス検査費用を負担する理由は、次の通りだ。
・新型コロナウイルスの局所的な発生を早期に特定して封じ込めるとともに、より伝染性が高いとされる変異体に対処するため。
・検査を奨励するため。
スイス連邦政府が、無症状者に対する新型コロナウイルス検査費用の負担の決定には、次のような背景がある。
新型コロナウイルスの症例について、半数以上が感染の自覚のない無症状者を通じて発生している。そのため、2020年12月中旬以降、感染防止コンセプトの枠内において、老人・介護ホーム、ホテルまたは職場における無症状者の検査が認められた。
簡易検査の結果が陰性であれば報告する必要はないが、陽性の場合は、PCR 検査を受検し結果を報告する義務がある。
#スイス
連邦政府は、新しい変異体による3月からの毎日の感染の増加を恐れている。あるシナリオでは、現在の新規感染者数1,600人に対して、
3月は、1日あたり15,000人の感染を予測😱https://t.co/561ajJ8Vh5— Riyo🤲🏻国際都市ジュネーブから🌍 (@KojimaRiyo) February 7, 2021
スイス連邦政府は、感染力の強い変異体を警戒している。
2. 濃厚接触者に対する検疫(自己隔離)ルールの変更
使用の画像 : Pexels
これまで実施されてきた濃厚接触者に対する検疫措置は、感染者との最後の接触から10日間の自己隔離だったが、2月8日(月)からは、7日目以降に抗原検査または PCR検査を受検し、検査結果が陰性の場合は、各州保健当局の承認を得て、検疫措置を早期に終えることが可能となる。
ただし、その場合でも、10日間の自己隔離期間が終了するまではマスクの着用と社会的距離の維持(1.5メートル)が求められる。
また、濃厚接触者の検査費用は本人が負担する必要がある。
3. スイス入国時における PCR 検査結果陰性の証明
使用の画像 : Pexels
2月8日(月)以降、(スイスが指定する)感染リスクが高い国・地域からスイスに入国する場合において、渡航者は、次の2つが義務付けられる。
・スイス入国前72時間以内の PCR 検査陰性証明の提示。
・現行措置と同様に10日間の検疫(自己隔離)の実施。
ただし、(入国後の)抗原検査または PCR 検査結果が再び陰性の場合は、7日後に検疫措置を終えることが可能。
また、(スイスが指定する)感染リスクが高い国・地域ではない国などからの空路によるスイス入国時においても、 PCR 検査陰性証明を提示出来るようにすることが求められる。
陰性証明確認は航空機の搭乗前に行われるとのこと。
2月5日(金)、スイス連邦司法・警察省は、スイス国外からスイスへ入国する場合に入国制限措置を免除する国のリストを改訂(2月2日付)し、日本を同リストから削除した。同改訂は、2月8日(月)午前0時から適用される。日本からスイス[…]
各国は、外国から自国内に新たにウイルスを持ち込まれたくない。そこで取る措置が「入国制限」と「自己隔離」だ。スイスは、入国の際どのような措置を取っているのか?スイス入国後「自己隔離」が必要となる国・地域は、どのような基準で決められてい[…]
日本からスイスへの入国は、2021年2月8日(月)以降、入国制限措置が適用され、観光などの短期滞在目的での入国は認められないので注意が必要だ。[sitecard subtitle=関連記事 url=https://riyoblog.co[…]
4.【感染者追跡のための連絡先情報の収集について】車で入国する人にはちゃんと検問できるのか?
使用の画像 : Pexels
これまでは、スイス入国時に連絡先情報を提供しなければならないのは、(スイスが指定する)感染リスクが高い国・地域からの渡航者のみだった。
1月27日の記者会見で、記者から「普段からスイスとの国境を越境して生活している住民以外で、車でスイスに入国する人も PCR 検査陰性証明を提示しなければいけないのか?具体的にどのように検問するのか?」と質問が出た。
それに対して、Alain Berset(アラン・ベルセ)氏は、多少言葉につまりながら次のように答えた。
「スイスより感染率が低い国・地域からスイスに入国するなら PCR 検査陰性証明の提示は必要ない。しかしリスクのある国・地域からならPCR 検査陰性証明の提示しなければいけない。そして、車でスイスに入国する人には、ランダムに検問をする。」
それに対して、さらに同じ記者が「具体的には?」とたたみかけた。
Alain Berset(アラン・ベルセ)氏は、「国境の税関職員が時々車をチェックして、PCR 検査陰性証明を持っているか確かめる。」と早口に答えた。
記者は「今朝、そのような検問は全くできないと言っていた税関職員がいるが、それについてはどうか?」と追い討ちをかけた。
国境の検問に関わる人が Alain Berset(アラン・ベルセ)氏に代わって次のように答えた。
「同僚がそんな事を言うのには驚く。国境の検問のオーガニゼーションの問題で、我々はできる。」
スイス連邦政府
スイスは、フランス、ドイツ、オーストリア、イタリアに囲まれている。国境の数が多い。
ジュネーブでも、フランス領の近くに住む知り合いは、フランスに肉など買い物をしに行き小さい税関をしょっちゅう車で通過するそうだが、平常時の20年間、検問を受けたのはたった2回だけとのこと。平常時は無人の税関もある。
ランダムに検問すると言うことは、見落としもある。ゼロコロナを目指すワケではない。
5. 刑事罰および行政罰の適用
使用の画像 : Pexels
違反に応じて罰金は50~200スイスフランに設定。
次のような場所でマスクを着用していない人に対し罰金が科される。
・公共交通機関内
・駅
・バスなどの停車場
・公共施設内など
また、無許可のイベントへの参加や禁止されているプライベートイベントを実施した場合には、行政罰による罰金が科される。
6. スイス連邦政府による薬局での予防接種費用負担
使用の画像 : Pexels
スイス連邦政府の発表のリンク
スイス連邦内閣閣議決定プレスリリース(ドイツ語、フランス語、イタリア語、英語)
https://www.admin.ch/gov/de/start/dokumentation/medienmitteilungen/bundesrat.msg-id-82136.html
在スイス日本国大使館と在ジュネーブ領事事務所の連絡先
在ジュネーブ領事事務所
(ジュネーブ州、ヴォー州、ヴァレー州およびティチーノ州にお住まいの方)
電話:022 716 9900
Fax :022 716 9901
ホームページ:https://www.geneve.ch.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
まとめ
使用の画像 : RiyoBlog
本記事では、下記の順序で、1月27日、スイス連邦内閣発表の「新型コロナウイルス感染症の流行を封じ込めるための一連の措置」について、ポイントをご紹介・解説した。
・1. 新型コロナウイルス検査戦略の拡張
・2. 濃厚接触者に対する検疫(自己隔離)ルールの変更
・3. スイス入国時における PCR 検査結果陰性の証明
・4.【感染者追跡のための連絡先情報の収集について】車で入国する人にはちゃんと検問できるのか?
・5. 刑事罰および行政罰の適用
・6. スイス連邦政府による薬局での予防接種費用負担
・スイス連邦政府の発表のリンク
・在スイス日本国大使館と在ジュネーブ領事事務所の連絡先
スイスは、1月の初め、英国由来の変異体を目の前に手をこまねいていたように見えたが、1月後半から積極的に感染拡大を抑える政策を取ろうとしている。
この記事で私が伝えたい事は次の2つだ。特にスイスに似た状況の地域にお住まいの方にだ。・楽観視しないで最悪の事態を考えて、行動をとった方がいい。・情報は、政治家の発言だけでなく、様々なサイドの医師・研究者などが発信する情報を自[…]
次の記事で、スイスの2月の感染者数の推移、検査・ワクチンの状況をお伝えしている。グラフ付き。月〜金で更新。
2021年2月、スイスは感染力が強い変異体を警戒している。3月に1日あたりの感染者数が1万5000人なるかもしれないと、スイスの政治家は注意を喚起した。#スイス連邦政府は、新しい変異体による3月からの毎日の感染の増加を恐[…]
12月19日、英国政府は新型コロナウイルスの変異株を検知したと発表。WATCH LIVE: An update on coronavirus (19 December 2020) https://t.co/zqVXIkifSd[…]
12月18日、スイス連邦政府は、新型コロナウイルス感染症に対する「全国的措置の強化」を発表した。12月11日に、新型コロナウイルス感染症に対する「全国的な追加措置」を発表したばかりだ。[sitecard subtitle=関連記事 […]
2020年11月は、スイスにとって悪夢のような数週間だった。大阪府ほどの人口のスイスで、1日あたりの新規感染者数1万人超えを記録し、ジュネーブ州がヨーロッパで一番感染率が高い地域となった。#スイス #COVID19家族以外は[…]
スイスの「12月の感染者推移」は、11月の爆発的な感染拡大は抑えたものの、横ばいで減少しなかった。[sitecard subtitle=関連記事 url=https://riyoblog.com/can-switzerland-prev[…]