日本語非ネイティブの学習者に日本語を教えていて、「文法」は理解しているのに、なかなか日本語が話せるようにならない学習者に会ったことがないだろうか?
ヨーロッパ言語がネイティブの方が日本語を勉強しても、「日本語ネイティブと話すと話せなくなる ! 」というケースは多い。[sitecard subtitle=関連記事 url=https://riyoblog.com/two-tips-f[…]
「会話」ができるようになりたい日本語学習者は、勉強しても話せないと、疑問・悩み・もどかしさを抱え、日本語学習に興味を失ってしまうこともある。
日本語学習者が出来るだけ早く日本語を話せるように教える2つのコツは、次の通りだ。
- 日本語の「間投詞」を適切に使いコミュニケーションを取れるようにする。
- 「動詞の部分と文末」を状況に合わせて使えるようにする。
1つ目の「間投詞」の方が、2つ目の「動詞部分・文末」よりカンタンに使えるようになる。
「動詞部分・文末」は難しい。学習者のレベルに合わせてよく使うものから少しずつ教えるのが効果的だ。
本記事では、日本語の学習者が出来るだけ早く日本語を話せるように教えるコツ2つ、具体例、私の経験談を、次の順序でご紹介・解説する。
・なぜ「間投詞」とカジュアルな話し方で使われる「動詞の活用・文末部分」を教えるのか?
・1. 日本語の「間投詞」を学習者が適切に使えるようにする【必見】
・2. 日本語の「動詞の部分・文末」を学習者が状況に合わせて使えるようにする【必見】
私はスイスのフランス語圏で日本語を教え始めて13年くらいになる。初めはスイスの大学の日本語学科で勉強するフランス語・英語がネイティブの友達の試験勉強を手伝い、それがきっかけで大学や語学学校の授業とは違う「日本語の会話」に重点を置いた授業・レッスンを始めた。
日本語を教え始める前は、6年ほどパリの国立の高等教育機関で自分の専門分野をフランス語で勉強したが、最初の4年間は専門的なことはだいたい理解できるのに、フランス語の日常会話や友達とのカジュアルなオシャベリができずとても苦労した。
その経験を踏まえて、非ネイティブが外国語として日本語を学び、実生活で日本語ネイティブとコミュニケーションをとったり、アニメ・ゲームを楽しんだり、ブログやSNSで発信したりできる日本語の学習を目指している。
この記事の対象は、次の通り :
- 日本語を教えられている方
- 日本語と外国語のタンデム・交換授業をされている方
- 日本語を話せるようになりたいパートナーや家族をお持ちの方
- 外国語を勉強されていて日常会話ができるようになりたい方
この記事の目的は、次の悩みを抱える日本語学習者を助けたり指導するためのものだ :
- 専門的な話はだいたい理解できるけど、日常会話や友達と話すのがナゼかうまく出来ない。
- 大学・語学学校などアカデミックな環境で日本語を学んだけど、日常会話・話すのが上手くならない。
- 文法は中級くらいまで理解していて教科書の練習問題はできるが、日本語ネイティブと話すと話せなくなる。
- 日本語の読み書きもゆっくりだけどできてリスニングもできるほうけど、日常会話がギコチない。
- 日本語学習が長いのに、なかなか話せるようにならない。
日本語を教える方だけでなく、出来るだけ早くヨーロッパ言語などの外国語を話せるようになりたい方にもぜひ参考にして頂きたい。適切な「間投詞」を使いこなせるようになればコミュニケーションが取りやすくなる。それはヨーロッパ言語でも同じだ。
日本語ネイティブでも頭を悩ます尊敬語・謙譲語などの敬語の正しい使い方については、別の記事で取り上げる予定。
なぜ「間投詞」とカジュアルな話し方で使われる「動詞の活用・文末部分」を教えるのか?
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日本語非ネイティブが家族・友人間の親しい日本語ネイティブと話す時、「語彙」が少なくてモタついてしまったり、状況や場所に合ってないスタイルで話して妙に堅苦しくなってしまうことがある。
そんな時、ネイティブが理解を示せばいいだけで、ワザワザ「間投詞」と「動詞部分・文末」は教えなくていいと言う意見もある。特に「間投詞」は、一般的な授業・教科書ではサラッと触れる程度だから大事じゃないと思う方もいる。
しかし次のような学習者に出会ってきて、日本語を教える側としてとても残念な気持ちになる。
・いわゆる「キチンとした日本語」をマジメに学んできたけど、実際の日本語ネイティブ同士の会話とはかなりかけ離れたスタイルの日本語しか話せず、日本語ネイティブと話した時に違和感を感じて話せなくなってしまう。
・極め付けは、語彙も少なくピッタリとした「間投詞」が使えないからすぐ言葉に詰まり、日本語でのコミュニケーションは出来なくなり諦めてしまう。
日本語非ネイティブでも、いくつかコツさえおさえれば、カジュアルな日本語を話せるようになっていく。特に家族・友人間の親しい人同士の会話では、チョットしたコツが大事だ。
日本語での家族・友人間の親しい人同士の会話のコツは、次の2つだ。
- 「間投詞」を適切に使いコミュニケーションを取る。
- 「動詞の部分・文末」を状況に合わせて使いこなす。
ちなみに「間投詞」は、ヨーロッパ言語の日常会話でも同じく重要。私が4年間もフランス語でアカデミックなことはだいたい理解できても友達とのカジュアルなオシャベリができず苦労したのは、「間投詞」が貧弱でコミュニケーションがギクシャクしていたからと言うのが大きい。
「フランス語を勉強しているけど、なかなか話せるようにならない」というお悩みをお持ちじゃないだろうか?私は日本の大学でフランス語を第2学国語として勉強し、大学を卒業した後は留学のためフランスで生活し始めた。しかし最初の4年間ほ[…]
1. 日本語の「間投詞」を学習者が適切に使えるようにする【必見】
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日本語の「間投詞」を学習者が習得するにあたって、次の順序でご紹介・解説する。
・「間投詞」を学ぶメリット
・「間投詞」を教える時の3つのポイント
・日本語の教科書の中の「間投詞」
・日本語ネイティブが日常会話で使う「間投詞」
・日本語の「間投詞」を非ネイティブの学習者に教える手順【重要】
「間投詞」を学ぶメリット
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「間投詞」を学ぶメリットは次の通りだ。
・「語彙」が少ない学習者でも「間投詞」がうまく使えれば、話し相手の言ってる意味がイマイチわからない時も、日本語で聞き直して日本語のまま学べる。
・コミュニケーションがより早くなめらかになる。
・日本語ネイティブとコミュニケーションが取りやすくなり、日本語の学習のモチベーションが上がる。
・比較的カンタンに習得できる。
「間投詞」を日本語の学習者が使えるようにする目的は、日本語でコミュニケーションが取れるようにするためだ。
コミュニケーションが取りやすくなれば、話し相手の言ってる意味がイマイチわからない時も日本語で聞き直して日本語のまま学べる。
例えば大抵の学習者は日本語の会話でイマイチ理解できない時、「すみません、もう一度言ってください。」と言えば、話し相手が繰り返してくれることを授業・教科書で習い知っている。
以上のように、私たち日本語ネイティブは、場にあった言葉をそれほど深く考えずに使っている。
家族・友人間の親しい人同士のカジュアルな会話で聞き返しをする時、「すみません、もう一度言ってください。」と言う日本語ネイティブはほぼいない。家族・友人間のワイワイした雰囲気の中で「すみません、もう一度言ってください。」と言ったら、次のような印象を持たれてしまう。
・バカにしている・怒っている
・ロボットみたい
・上下関係の下の人
「すみません、もう一度言ってください。」を日本語ネイティブが使う時は、授業中などの公的な場所でちゃんと聞き取れなかった時だ。友達とワチャワチャやってる時には言わない。
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日本語ネイティブは、短い「間投詞」を単体もしくは複数組み合わせて無意識に使い、自分の意図通りに話し相手に話題を繰り返させたり、詳しく説明させたり、別の言葉に言い換えさせたりしている。
非ネイティブの学習者も「間投詞」が使いこなせれば、多少わからない言葉があっても話がはずむし日本語がどんどん話せるようになる。特に友達・家族間でやカジュアルに話せる相手との会話では、「間投詞」は、かなりお役立ちアイテムだ。
「日本語のクラスでは日本語話せるのに、日本語ネイティブとは日本語で話せない」と学習者に言われないようにしたい。
「間投詞」を教える時の3つのポイント
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日本語の「間投詞」を非ネイティブの学習者に教える方法に入る前に、「間投詞」を教える時のポイントを3つまとめた。
3つのポイントを踏まえながら、一般的な日本語の教科書の中の「間投詞」と日本語ネイティブの日常会話での「間投詞」について改めて比較する。
- 日本語非ネイティブの学習者に、「間投詞」がコミュニケーションをなめらかにさせるための潤滑油・あるいはお役立ちアイテムなのを意識させる。
- 日本語の「間投詞」について意識的に授業中に触れ、自分で適切な教材を作る。
- ネイティブがよく使う「間投詞」は、言葉の持つニュアンスとともに優先的に教える。
私は日本語の学習者に「間投詞さえ知っていれば、日本語が話せるようになる。」と言って、「間投詞」にも注意を払うよう呼びかけている。大抵みんな笑うが、日本語の学習者の大半はマジメで「文法」「語彙」「表記」にばかり目を向け、「日本語は難しい」「日本語は話せない」と言いだすので、学習者に「間投詞」を意識させることは大切だ。
ポイント1 :
日本語非ネイティブの学習者に、「間投詞」がコミュニケーションをなめらかにさせるための潤滑油・あるいはお役立ちアイテムなのを意識させる。
日本語の教科書の中の「間投詞」
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文法中心の硬めの教科書だと「すみません ! 」や「あのう」はあるが、会話に役に立つような「間投詞」はあまり見当たらない。会話中心を売り物にしているトレンドを意識した教科書には「間投詞」の情報はあるが、いわゆる文法的ポイントをまず覚えようとする学習者が大半だ。それにこの「意味がなさそうであるような言葉」は使わないと忘れてしまう。教える側も大事な文法的なことに重点を置くのが一般的だ。
ポイント2 :
日本語の「間投詞」について意識的に授業中に触れ、自分で適切な教材を作る。
日本語ネイティブが日常会話で使う「間投詞」
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「間投詞」の中には子供や若者は使うけど年代が上の人は使わないものや、地域独特の「間投詞」もある。
日本語ネイティブが日本語で発言する時、頭が悪く見えるとか無駄な情報でうるさくなるという理由で余計な「間投詞」はできるだけ使わないように努力して話すこともある。しかし「間投詞」が全くない家族間・友人間の日常会話というのは存在しない。
ポイント3 :
とにかく「間投詞」は無数に存在するから、学習者にはネイティブがよく使う「間投詞」を、言葉の持つニュアンスとともに教える。
日本語の「間投詞」を非ネイティブの学習者に教える手順【重要】
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教える側は、日本語ネイティブだからこそできることをやるのがいい。学習者の言語が流暢に話せると説明しやすい。
私が提案する「間投詞」についての授業準備の手順は次の通りだ。
- 「間投詞」を思いつく限り書き出しリストにする。「間投詞」を使う状況・場面・感情・意図なども付け加える。
- 色々なスタイルの会話が出てくる日本のテレビドラマやアニメなどのメディアを見て、リストに「間投詞」を追加する。
- リストアップした日本語の「間投詞」に、使われる状況・場面・感情・意図・スタイル・ニュアンスなどを整理し、学習者が話す言語では何と言うかも付け加える。
- 頻出ワードの「間投詞」はマークする。
- 授業・レッスンでプリントを配布し説明する。
- 日本のテレビドラマやアニメなどの抜粋を使い、「間投詞」がどのようなコンテクストでどのような意味で使われるか見せる。
- ロールプレイングの手法で日本語を教える側と学習者が会話をし、学習者が「間投詞」と今までに勉強した言葉を使ってコミュニケーションできるようにする。
「間投詞」についての授業準備の手順の補足とポイントがこちらだ。
・2 のテレビドラマやアニメなどの動画から「間投詞」を書き出す時、動画を授業で見せることも考えてタイムラインもメモしておくといい。話す人の間柄も重要だ。カップル、友達、同僚、上司と部下などもメモ。
・3 のリストアップした「間投詞」の中には、学習者が話す言語に翻訳できないものもある。だから「間投詞」が使われる状況・場面・話す人の間柄・感情・意図・スタイル・ニュアンスなども書き留めておく。学習者が話す言語に翻訳ではないが同じように機能する言葉もあり、学習者の理解・記憶に役立てる。中には「お疲れ様です」「よろしく」などのように、ヨーロッパ言語に置き換え不可能に近いものもある。
・4 の頻出ワードの「間投詞」は、優先して教える。
・7 のロールプレイングの手法で日本語を教える側と学習者が会話をする時、学習者が色んな感情表現・意図を伝えることに着目するように促すことがポイントだ。例えば会話の中で「へえ ! 」と驚いたり「よかったじゃん ! 」と喜んだり「やっぱそうだよねー」と共感したり。とても親しい仲のくだけた会話、ちょっと距離感がある会話など色んなスタイルでやってみる。
日本語ネイティブだからできること・教える人の個性を生かしたやり方は大事だ。理由は、「間投詞」は「書き言葉」でも使われるものがあるが、「間投詞」の大半が「話し言葉」で使われ、「話し言葉」は地域性・年代・話し手の性格などにも影響され個性が出るものだからだ。日本語の多様性を学習者に伝えることも大切だ。
2. 日本語の「動詞の部分・文末」を学習者が状況に合わせて使えるようにする【必見】
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これは前述の「間投詞」よりもチョット難しい。「文法」の知識と使いこなす頭の回転の速さが必要だからだ。「動詞の部分・文末」を日本語ネイティブのように使いこなせるようになるには、かなり時間がかかる。授業・レッスンで使っているテキストのレベルに合わせて段階を追って少しずつ使えるようにするのが一番いい。
日本語の「動詞の部分・文末」を学習者に教えるにあたって、次の順序でご紹介・解説する。
・「です・ます」調以外の動詞の活用を学ぶメリット
・まず学習者ができるようにしておくこと
・普通形と「です・ます」調(丁寧形)を教える時、気をつけるポイント :
・「動詞の部分」について、初級の学習者でも取り組めること【重要】
・「文末」を学習者が状況に合わせて使えるようにする【重要】
「です・ます」調以外の動詞の活用を学ぶメリット
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説明したり冷静に話し合ったりする時は、「です・ます」調が合っている。しかし家族・友人間の親しい人同士の間で、様々な感情を表現してコミュニケーションをとりたい場合、「です・ます」調以外の動詞の活用が必要になってくる。
別の言い方をすると、丁寧語と言われる「です・ます」調は、キレイな話し方だがヨソヨソしさを与え、打ち解けることが難しくなる。状況によるが、心理的な距離感を作ってしまう。だから「です・ます」調以外のカジュアルな話し方を教えた方がいい。
例えばメチャメチャ仲の良い友達にプレゼントをもらう時、「うわあ ! 嬉しい ! ありがとう ! 開けてみてもいい?」と言うのと「嬉しいです。ありがとうございます。開けてみてもいいですか?」と言うのでは、なんかテンションが違うし、前者の方が嬉しい感情を炸裂させられる。
日本語ネイティブは「です・ます」調とそれ以外の動詞の活用を両方使いこなし、状況に応じて自由自在に自分が意図するコミュニケーションをとっている。日本語の初級の学習者には一見難しそうだが、出来ることがある。
まず学習者ができるようにしておくこと
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- 教科書でよく使われる「です・ます」調(丁寧形)の4つの活用(非過去・過去の肯定系・否定形)
- 普通形の非過去の2つの活用(肯定形・否定形)
1 は、「買います」「買いません」「買いました」「買いませんでした」の4つの活用。
2 は、「買う」「買わない」の2つの活用。
1 と 2 は規則的なので、グループ1の動詞もサクサク学習者は理解する。
動詞の「普通形」と「丁寧形」の活用表は、東京外国語大学言語モジュールのページをどうぞご覧いただきたい。
普通形と「です・ます」調(丁寧形)を教える時、気をつけるポイント :
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フランス語スピーカーは、「食べる?」と「食べます?」の違いを « tutoyer(注1) » と « vouvoyer (注2)» に当てはめて理解しようとする人がいるが、若干違うので注意が必要だ。
(注1)家族・友達などの親しい人や同格の相手、子どもなど目下の相手に対して使う二人称代名詞の « tu » を使って話すこと。
(注2)それほど親しくない間柄、もしくは公の場などで使う二人称代名詞の « vous » を使って話すこと。
フランス語では « tutoyer » と « vouvoyer » を同じ人に混ぜて使うことはないが、日本語では同じ人に「食べる?」と「食べます?」の2つのスタイルを混ぜて会話するのは珍しくない。
第一、「食べます?」は「食べる?」の丁寧語で、フランス語の « tutoyer » と « vouvoyer » に少し似てはいるけど、当てはめて考えることは出来ない。
フランス語を例にしたが、他のヨーロッパ言語でも同じことが言える。
「動詞の部分」について、初級の学習者でも取り組めること【重要】
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取り組めることというより、取り組んだ方が文法も得意になり日本語全般の運用に役立つ。
それはかなりシンプルで、たった2つだ。
・動詞の最後が「て」で終わる形 (Vて形)
・動詞の最後が「た」で終わる形 (Vた形)
日本語ネイティブは、カジュアルな日常会話では活用に頭を使うことなく使っている。しかし日本語非ネイティブの学習者には難しい。
「Vて形」とは?
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「Vて形」は、「食べて ! 」のように「Vて形」だけで行動を促すように使ったり、話が続く場合に「まずご飯を食べて、それから歯を磨いて、寝た。」のように使われることが多い。
「Vて形」は、「Vて形」だけでも使われるが、「Vて形」の後に「いる・います」を続け「今食べています」のようにある程度の期間続く動作を表すのに使われたり、「下さい」をつけて話し相手に物事を促したり軽い頼みごとをしたりするのに使われたりしている。
「Vて形」の後に続く言葉はたくさんあるが、大方の学習法では、「「Vて形」+ もいいですか?」「「Vて形 + おく・おきます」「「Vて形 + ある・あります」など「Vて形」の後に続く言葉は小出しにして、常に学習者に「Vて形」を学ばせようとしている。
「Vて形」は、日常会話でよく使われる動詞の活用形で、日本語非ネイティブの学習者には難しいから、「Vて形」を使いこなせるように教えなければ学習者はなかなか話せるようにならない。
「Vた形」とは?
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「Vた形」は、「Vて形」の「て」を「た」、「で」を「だ」に変えたものだ。
大多数の日本語を学習法では、まず「です・ます」調を教え、少しずつ「Vて形」と「Vた形」を使えるようにしていく。しかし「食べた?」のようにカジュアルな会話で「食べました?」の意味で使われるから、学習者の言語環境にカジュアルな会話があるなら積極的に教えるのが良い。
そして「Vた形」は、「Vた形」の後に「ことがあります」をくっつけ、「日本に行ったことがあります」のように経験があるという意味で使われる。初級では、「「Vた形」り、「Vた形」りします」という文型も教科書に出てくる。「食べたり飲んだりします」のようにいくつもある動作のうち2つ取り上げた文型で、日常会話にもよく出てくる。
「Vて形」・「Vた形」を学習者が使えるように対策する
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「食べて」は「食べます」から「ます」をとって、「食べ」に「て」をつければ出来上がりと説明できるが、「飲んで」「泳いで」はどうだろうか?
日本語非ネイティブ用の日本語の学習法では、「飲む」をグループ1の動詞と分類してるものが多いが、グループ1の動詞のほぼ不規則と言える「Vて形」・「Vた形」を体系的に説明している教科書は意外と少ない。
グループ1の動詞の「Vて形」・「Vた形」を教えるコツ :
1. グループ1の動詞の「Vて形」・「Vた形」だけ活用の仕方を整理し、自分でプリントを作り配布して教科書を補足し、学習者が正しい活用を忘れてしまった場合にサッと出して参照できるようにしておく。
2. グループ1の動詞の「Vて形」・「Vた形」は、教科書が「です・ます」調で統一されていても話す時に必要になるから、毎回学習者に注意を促し重点的に繰り返し扱う。
教科書で「Vて形」はどうなってるか?
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『みんなの日本語』という教科書では、「Vて形」は初級の14課になってからだ。「Vて形」が使えなければ、文法的にも限定されるし、とても変な日常会話になる。日本語の会話の運用を意識してか『まるごと』という教科書では、最初の方から「Vて形」を使い学習者に慣れさせようとしている。
グループ1の動詞の「Vて形」・「Vた形」が日本語非ネイティブの学習者には難しい理由は、活用の法則はあるもののの種類が多く覚えるのが大変だからだ。学習者が使いこなせるように工夫が必要だ。
ポイント :
「Vて形」と「Vた形」が日本語非ネイティブの学習者に難しくても、これが使いこなせなかったら日本語のカジュアルな日常会話はムリに近いから、教える側も学ぶ側も意識的に取り組む必要がある。
「文末」を学習者が状況に合わせて使えるようにする【重要】
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「文末」の口頭表現は、動詞の「Vて形」と「Vた形」よりずっと簡単だ。しかし「文末」の表現は「書き言葉」というより「話し言葉」で、教科書に網羅されているわけではないから積極的に取り上げると良い。とは言え「文末」の「◯◯ね」や「◯◯よ ! 」は、「間投詞」より学習者が自発的に気が付くからラクだ。
日本語の「文末表現」の効果的な教え方 :
- 例文とともに学習者の話す言語で大体どういう意味・ニュアンスになるのか説明する。
- 日常会話が出てくるアニメ・複雑すぎないけど面白いコンテンツのYouTube動画などを使い、「動詞・文末部分」に焦点を当ててシャドーイングのやり方でマネして発音させる。
- 同じ動画を使い、「動詞・文末部分」だけ書き取りをする。
- 書き取った「動詞・文末部分」を 1. と照らし合わせながら、学習者の話す言語で大体どういう意味・ニュアンスになるのか考えさせる。
日本語の「文末表現」の効果的な教え方の補足とポイント :
- はプリントを作るかPDFファイルで学習者に送ってプリントアウトしておいてもらえれば時間がかからなく効果的。「◯◯ね」や「◯◯よ ! 」の「文末表現」のプリントはザックリ作っておいて、学習者がピッタリの翻訳や補足情報を書き込めるようにしておく。
- シャドーイングはいちいち動画をストップさせないで、聞こえるところだけマネして発音していく。「動詞・文末部分」に焦点を合わせるようにお手本を見せる。
- 書き取りは、ひらがなをパパッと書けない学習者には、ローマ字表記でいいから出来るだけササッとやってもらう。
- 1. でやったことが基礎なら、4. は発展に当たるから、文末表現の複合されたものや補足情報を付け加える。
まとめ
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本記事では、ゼロからフランス語を学びフランス語圏で複数の学位をとりながらも日常会話ではフランス語ができなくて苦労した私自身の経験と、フランス語圏で日本語を教える経験を踏まえて、「日本語を勉強しているけどなかなか日本語を話せるようにならない学習者」が話せるようになるための2つのコツをご紹介した。
1. 日本語の「間投詞」を適切に使いコミュニケーションを取れるようにする。
2. 「動詞の部分と文末」を状況に合わせて使いこなせるようにする。
教科書の中心にはなっていない「話し言葉」・「カジュアルな日常語」だからこそ、学習者に注意を向けさせ、分析的に解説し、数多くの例に触れるさせることが大事だ。簡単な意思疎通・コミュニケーションが日本語でできる学習者が日本語をさらに学んでいけば、日本語学習に対するモチベーション・エンゲージメントも強まるし上達が早くなる。
注記・補足
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アニメが好きでよく見ている学習者は、教科書や授業にはあまり出てこない「話し言葉」をしょっちゅう聞いていて、日本語ネイティブが使うような表現を使ってそれらしく話せるようになる人が多い。
反対に、教科書や授業にはあまり出てこない「話し言葉」を聞く習慣がなく、マジメに教科書や文法的な練習問題をこなすのが好きな学習者は、なかなか日本語を話せるようにならないことがしばしばだ。
学習者の好みや傾向をリサーチし、学習者に合ったやり方で「話し言葉」ができるようになるよう授業・レッスンするのは大切だ。
次の記事で、私がフランスでフランス語の日常会話ができなくて苦労した体験記と、日本語ネイティブがヨーロッパ言語を話せるようになるための解決策についてご紹介している。
「日本語ネイティブがヨーロッパ言語をすぐ話せるようにならない」一般的な理由は以下の通りだ。1. 学校でヨーロッパ言語を習っても、日本にいる限りヨーロッパ言語を使う環境が少ないから。2. 学校で習うヨーロッパ言語は「読み書[…]
フランス語の日常会話ができるようになるコツをまとめた記事はこちらだ。フランス語の「間投詞」にも触れている。
「フランス語を勉強しているけど、なかなか話せるようにならない」というお悩みをお持ちじゃないだろうか?私は日本の大学でフランス語を第2学国語として勉強し、大学を卒業した後は留学のためフランスで生活し始めた。しかし最初の4年間ほ[…]