【スイスの売春】ロックダウン解除に向けて、政府は体位まで指導 !?【スイスの売春のウラ事情・2020年5月】

2020年5月25日、「売春」のガイドラインが、スイスのドイツ語の日刊紙 Aargauer Zeitung で報じられた。

日本の TOCANA は、「正常位禁止令をスイスが発令 ! 」と揶揄。

5月末ロックダウン解除に向けて、スイス連邦政府は、「売春」を営業再開可にした。

しかし、柔道、ボクシング、レスリングなど、密接な肉体的接触があるスポーツは引き続き禁止。

なぜ「売春」は営業再開OKなのか?真意は?

本記事を書くにあたって、色々調べながら至った私の考えは、次の通りだ。

・政府が発表する「新型コロナウイルス対策」は、疫学的見地に基づいているように見え、実は政治的決断が色濃いのじゃないか。

・医師や科学者などの専門家の最新の研究や、「新型コロナウイルス」に関する世界の状況をもっとよく見た方がいいのじゃないか。

本記事では、次の順に、スイスのロックダウン(都市封鎖)解除後に向けた「売春」の営業再開についてと「新型コロナウイルス感染拡大前のスイスの売春事情」をご紹介する。

・スイスのロックダウン解除後の「売春」に関するポイント・ガイドラインとは?

・「売春」の営業再開、「新型コロナウイルス対策」として矛盾していない !?

・これまでのスイスの売春を巡る論議

スイスのロックダウン解除後の「売春」に関するポイント・ガイドラインとは?

スイスのロックダウン解除後の「売春」に関するポイント・ガイドラインとは?

使用の画像 : Pexels

2020年5月25日、Aargauer Zeitung で報じられた「売春」ポイント・ガイドラインは、次の通りだ。

68日から営業可能。

・客が来るたびに少なくとも15分間は部屋を換気する。

・ベッドシーツやハンドタオルを毎回60度以上の温度で洗う。

4週間、客の連絡先を保管する。

・セックスワーカーには、消毒・コンドーム・手袋・口と鼻を覆うフェイスシールドを常時着用することを推奨。

・キスは禁止。

・プレイ中の体位は、唾液や飛沫からの感染を防ぐため、互いの顔が近づかない「後背位」や「背面騎乗位」を推奨。「正常位」を控えるよう通達されている。

Aargauer Zeitung

Sexarbeiter sollen ab dem 8. Juni ihre Arbeit wieder aufnehm…

ガイドラインを見ると、様々な疑問が浮かぶ。

・「新型コロナウイルス対策」とは言え、前述のガイドラインを守りながら、利用したい客はいるのだろうか?

・感染リスクが高く、営業停止にするべきなんじゃないか?

記者会見でも、ジャーナリストが「売春」の営業再開は「新型コロナウイルス対策」として矛盾していないか、質問した。

「売春」の営業再開、「新型コロナウイルス対策」として矛盾していない !?

「売春」の営業再開、「新型コロナウイルス対策」として矛盾していない !?

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「売春」が、68日から営業可能と報じられた。しかし「新型コロナウイルス対策」として、スイスの政治家たちの決断には、大きい矛盾がある。

5月27日の記者会見の動画(46:30)では、男性ジャーナリストがニヤニヤし体を揺すりながら、« Service érotique » について、次のように質問。

柔道、ボクシング、レスリングなど、密接な肉体的接触があるスポーツは引き続き禁止。なのに、セックスワーカーは、もうすぐ営業再開できる。なぜか?

これには、決断した側の Alain Berset (アラン・ベルセ)氏も首をかしげた。

Alain Berset (アラン・ベルセ)氏の答弁の内容をザッとまとめると、次のようになる。

・「密接な肉体的接触があるスポーツ」は禁止なのに、「密接な肉体的接触がある売春」が営業可能になるのは、確かにおかしい。

・しかし、「売春」を営業再開するのは、政府にとって重要な事。理由は、「売春」は営業停止にしても、「売春」と言う活動はなくならなず、闇で営業が行われる可能性が非常に高い。「新型コロナウイルス」の拡大を防止するためには、「売春」を営業再開し、キチンとしたガイドラインを引き、オーガニゼーションし、観察する必要がある。さらなる議論も必要だ。

ご紹介の動画で、フランス語での記者会見のやりとりを見ることが出来る。

スイス連邦政府は、5月27日の記者会見で、「売春」の営業再開に関して、次のような意図を示したと言える。

売春の停止によって増える「売春の闇営業」を視野に入れて、闇営業で「新型コロナウイルス」の感染拡大が起こらないよう、営業再開可にし、ガイドラインを引き対策をする。

次に、「これまでのスイスの売春を巡る論議」をご紹介。

これまでのスイスの売春を巡る論議

これまでのスイスの売春を巡る論議

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スイスでは、「売春」は合法。

Googleで「スイス 売春」で検索すると、1ページ目に「スイスの売春の体験レポート」や「スイスの風俗、最高」みたいなコンテンツが出てくる。

しかし、日本でも「風俗」を巡り様々な意見があるのと同じように、スイスでも「売春」を巡り様々な論議がされている。

次の順に、スイスの「売春」禁止案を巡った論議についての記事を引用して、お伝えする。

・「売春」が合法のスイスでも、2018年に「売春禁止キャンペーン」がスタート

・スイスでは「売春禁止」を求める声は少数派 !?

・スイス、実は「女性蔑視」の国 !?

ご紹介する記事は、2018年に、swissinfo.ch が発表した「売春は女性蔑視か人権か 禁止案めぐりスイスで意見が二分」。

「売春」が合法のスイスでも、2018年に「売春禁止キャンペーン」がスタート

「売春」が合法のスイスでも、2018年に「売春禁止キャンペーン」がスタート

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同記事によると、2018年6月28日に、小さなNGO「チューリヒ女性本部」が、スウェーデンを模範にした売春禁止キャンペーンをスタート。

キャンペーンビデオの中で「売春がどうして合法なんだ?」と問うと、「それはもちろん、お金が儲かることならスイスは何だって合法だからさ」と男性が答える。そして「スイス人はまだ中世に生きているみたいだ」と続く。

しかし「「売春」は女性蔑視だ」と言う意見や、「売春禁止」を求める声は、少数派にとどまっているらしい。

スイスでは「売春禁止」を求める声は少数派 !?

スイスでは「売春禁止」を求める声は少数派 !?

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同記事から引用してご紹介する。

ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、売春禁止は高コストになると報じている。売春業を違法化したい人は、女性が新しい仕事を探す際のサポートや職業転換訓練の費用を負担するべきで、「それ以外の方法は偽善的で不公平」としている。

また、ドイツ語圏の日刊紙NZZは「売春は女性を尊重する視点を養うというより、むしろ女性蔑視につながる行為だ。性別の対等関係を促進するわけでもない」と禁止の意義は認める。しかし「禁止によって売春が闇市場に流れないという保証はない。そうすれば女性に今以上の不法労働を強いる恐れがある」と禁止のデメリットを並べたてた。

近年、ヨーロッパの他国が「売春」に関して激しい討論があったにも関わらず、スイスは「うわべを取り繕っている」と、前述の「チューリヒ女性本部」の代表が発言。

スイス、実は「女性蔑視」の国 !?

スイス、実は「女性蔑視」の国 !?

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2020年、スイス連邦の大統領を務めるのは、Simonetta Sommaruga(シモネッタ・ソマルーガ)氏。一国の大統領を女性が務めるのだから、「男女平等が行き届いた先進国」をイメージする。

しかし、実態はそうでもないようだ。

前述でご紹介した記事から「スイスの近年の売春の歴史と様子」を引用してご紹介する。

19世紀末期、売春の禁止を求める廃娼運動が英国を発端に世界各国で始まり、スイスでも同様の動きがあったが、1942年にスイスでは売春が合法であると明文化された。そして20世紀末頃からスイスの法実務は自由化が進み、国際的に見て特に多くの売春宿が設けられた。欧州連合(EU)とスイスの間で人の自由な移動が認められたことを受け、21世紀初頭には東欧から大量の女性が流れ込んで来た。

 街にあふれる路上売春に対する取り組みとして、チューリヒは2013年に「セックスドライブイン」を作ることを決定。税金で売春専用の駐車施設が建てられた。客はドライブインと同じように車で出入りし、売春婦は人目のないドライブインで「仕事」を済ませられるという仕組みだ。近くには警報ベルも装備してある。麻薬政策と同じように、スイスでは売春も禁止より自分で管理する道を選びたいようだ。 

「売春禁止」を求める「チューリヒ女性本部」のキャンペーンビデオでは、「スイスでは1971年にようやく女性参政権が認められたこと」が冷笑されている。

チューリヒ女性本部のギスラー代表は、次のように「スイスの女性蔑視」を指摘する。

「スイス人は国際色豊かでオープン、かつ寛容な国民だという自己像を持っている。しかし実際は、男女平等に関してスイスが先進国に含まれていたことは一度もなかった」。

スイスでは伝統的な役割分担が今も根強く残っているという。「スイスにやって来た外国人が保守的なスイス人に驚くのはよくあることだ」

「構造的女性差別」と結びついている「売春」

「構造的女性差別」と結びついている「売春」

使用の画像 : Pexels

スイスでも日本でも「売春」や「風俗」が、「構造的女性差別」と結びついている。

私が考える「構造的差別」の主な問題点は次の通りだ。

・特権階級と言われる「社会の中の強者」は、「構造的差別」を維持・搾取しようとする。

・情報通だったり博識で良識のある人の中にも、「構造的差別」を自ら体験しないので、「構造的差別」を「社会問題」と認識していない。

・知識も良識もない人たちは、「社会の中の弱者」を平気で利用する。

言わば、全員が共犯者で、それに気がつかなかったら、「構造的差別」をなくす事は難しいと感じる。

スイスの「売春」や日本の「風俗」に関する「構造的女性差別」にも、同じ事が言えるだろう。

まとめ

【スイスの売春】ロックダウン解除に向けて、政府は売春の体位まで指導 !?【スイスの COVID19 対策・2020年5月】

使用の画像 : Pexels

本記事では、下記の順に、スイスのロックダウン(都市封鎖)解除後に向けた「売春」の営業再開についてと「新型コロナウイルス感染拡大前のスイスの売春事情」をご紹介した。

・スイスのロックダウン解除後の「売春」に関するポイント・ガイドラインとは?

・「売春」の営業再開、「新型コロナウイルス対策」として矛盾していない !?

・これまでのスイスの売春を巡る論議

政府が発表する「新型コロナウイルス対策」は、疫学的見地に基づいているように見え、実は政治的決断が色濃い。

医師や科学者などの専門家の最新の研究や、「新型コロナウイルス」に関する世界の状況を見るのは大切だ。

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